文豪スイング 123 島崎藤村『幸福』（しあわせ）

本日は160本バットを振りました。

皆様こんばんは。
いかがお過ごしでしょうか。

今日は文豪スイングで1話完結です。
ボールの絵文字のところでバットを振りました。30スイングでした。

『幸福』（しあわせ）　島崎藤村

「幸福」がいろいろな家へたずねて行きました。⚾︎
　どこの家も、大喜びで迎えてくれるにちがいありません。⚾︎
けれども、それでは人の心がよく分りません。⚾︎
そこで「幸福」は貧しい乞食のような服装をしました。⚾︎
自分は「幸福」だと言わずに「貧乏」だと言うつもりでした。⚾︎それでも自分を迎えてくれる人がありましたら、⚾︎

その人のところへ幸福を分けて置いて来るつもりでした。⚾︎
　
犬の飼ってある家の前に「幸福」が立ちました。⚾︎
　そこの家の人は
「お前さんは誰ですか。」⚾︎
　と尋ねました。
「わたしは「貧乏」です」⚾︎
「「貧乏」はうちじゃお断りだ。」⚾︎
戸をぴしゃんとしめました。⚾︎
おまけに、犬がおそろしい声で追い立てるように鳴きました。⚾︎

今度は鶏の飼ってある家の前に立ちました。⚾︎
「お前さんは誰ですか。」⚾︎
　と尋ねました。
「わたしは「貧乏」です」⚾︎
「「貧乏」はうちじゃ沢山だ」⚾︎
　と深い溜息をつきました。⚾︎
鶏は「コッ、コッ、コッ、コッ」と
用心深い声を出して鳴きました。⚾︎

今度は兎の飼ってある家の前に立ちました。⚾︎
「お前さんは誰ですか。」⚾︎
「わたしは「貧乏」です」⚾︎
「ああ、「貧乏」か。」
　と言いましたが、⚾︎
なさけというものがあると見えて、
台所からおむすびを握って来て、⚾︎
「さあ、これをおあがり。」⚾︎
　と言ってくれました。

そこの家の人は、沢庵までおむすびに添えてくれました。⚾︎
「グウ、グウ、グウ、グウ。」⚾︎
　と兎はいびきをかいて、さも楽しそうに昼寝をしていました。⚾︎
「幸福」はうれしく思い、⚾︎
その兎の飼ってある家へ幸福を分けて置いて来ました。⚾︎